国家試験である「情報処理技術者試験」の難関高度区分にも多数合格している、現役のソフトウェアエンジニアです。
システムアーキテキクト試験にも合格しています。
システムアーキテクト(SA)は、情報処理技術者試験の高度区分の難関試験です。
準備なしで合格するのは、至難の業。
でも、しっかり準備さえしておけば、一発合格も決して難しいことじゃありません。
本記事では、経験者の立場から、最短合格するための対策方法とポイント、参考書の選び方を解説します。
システムアーキテクト試験について
詳しいところは、公式のIPAホームページをご覧くださいね。
システムアーキテクトは、『上級SE』の資格です。
システム開発の要件定義から、実現するための設計思想、基本設計を行い、開発を主導する人を対象像としています。
この試験に合格していれば、「SEとして信頼に足る知識を備えている」ことを形として示すことができます。
合格できるSEはそう多くないですから、持っていると周りの評価も変わるかもです。
有体に言えば、会社で評価されやすく、転職にも有利ってことですね。
デファクトスタンダードの知識を知っていて損はありません。
SEを仕事にしているなら、ぜひとも合格したい試験です。
試験内容
試験は年に1度だけ。
例年、10月の第3日曜日に行われます。
試験は、午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの4つで構成されています。
試験時間は9:30~16:30と1日掛かり。
全部終わるとグッタリするくらいです。
こんな長丁場の試験で採点も大変だろうに、受験費用はたった5,700円。
実はとってもお得で、コスパのよい試験だと思います。
試験時間:50分
選択式(4択):30問
試験時間:40分
選択式(4択):25問
試験時間:90分
記述式:4問中2問解答
試験時間:120分
記述式:3問中1問解答
午前Ⅰに限っては、条件を満たせば免除にできます。
免除条件は、2年以内に次のいずれかの条件をクリアしていること。
- 応用情報技術者試験、安全確保支援士試験、他の高度試験のいずれかに合格。
- 安全確保支援士試験、他の高度試験の午前Ⅰで合格点(60点)を取得
免除にできれば、試験勉強する上でも試験を受ける上でも有利ですから、できる限り利用していきたいところです。
但し、試験申込時に申請が必要です。
免除条件を満たしている人は、絶対に忘れないようにしましょうね。
難易度
率直に言って、高難易度です。
受験資格は設定されていないので、学生でも実務経験なしであっても誰でも受けられます。
ただ、システムアーキテクト視点での論述試験もあるので、やっぱり実務をしている人が有利ですね。
合格率は12.5~15%程です。
合格率だけで見ると、それ程高難度には見えないかもです。
ただ、受験する人のレベルが高めなんですね。
合格者の平均年齢は30代半ばくらい。
情報処理技術者試験の高度区分ですから、応用情報技術者試験や他の高度区分の合格者達が受験します。
受験するのは、それなりの実力者ばかりということです。
そして、合格率は試験を受けた人だけの数値です。
実は、試験に申込した人のうち30~40%くらいの人は試験を受けていないんですよね。
受験費用も安いし試験は1日かかりですから、合格しそうもないからやっぱ諦めよってなる人も多いんです。
なので、受験するのはちゃんと勉強をした人ばかり。
合格率はそれなりにありますが、やっぱり高難易度なんです。
自分を信じて勉強しましょ。
最短合格のための対策
さて、ここからが、自分の経験に基づく最短合格のためのポイント解説です。
参考書の選び方
まずは、参考書(教材)を選ぶところからです。
システムアーキテクト試験の場合、実質、参考書の選択肢は次の4つと言っていいと思います。
- [翔泳社] 情報処理教科書システムアーキテクト
- [iTEC] システムアーキテクト「専門知識+午後問題」の重点対策
- [技術評論社] システムアーキテクト合格教本
- [TAC] ALL IN ONE パーフェクトマスター システムアーキテクト
この他にも、午後Ⅱの論文の書き方に特化したもの、午前問題に特化した参考書はありますが、苦手分野の克服として使うものです。
基本は、この4つの中から1つを選ぶことになります。
一番良い参考書はどれなのか?
では、次は一番良いのはどれかという話。
実は、どれも内容はそれほど違いません。
どの参考書も『過去問をピックアップしての解説、論文の書き方と論文執筆例』です。
ちなみに午前Ⅰの内容については、どの参考書にも含まれていません。
午前Ⅰは、高度試験共通で、応用情報の午前問題と同等の足切り試験ですから。
じゃあ、どの参考書を選んでも同じなのかというと、そうでもありません。
内容はそれほど違わなくても、解説の仕方というかレベル感が結構違います。
自分が読みやすいものを選ぶことが合格への近道だと思いますね。
私見も入っていますが、それぞれの参考書の特長を簡単に説明します。
[翔泳社] 情報処理教科書システムアーキテクト
情報処理技術者試験と言えば、やっぱこれ。
翔泳社の「情報処理教科書」シリーズです。
午前Ⅱは含まれず、午後Ⅰ、午後Ⅱの対策本になっています。
応用情報技術者試験や他の高度試験に合格している人なら、午前Ⅱは公開されている過去問を解くだけで十分です。
実際に合格を左右する午後試験を特化しているのは、理にかなっています。
それに、なんか他の参考書より読みやすくできているんですよね。
さすがは翔泳社という感じです。
応用情報技術者試験や他の高度試験に合格している人なら、この参考書が良いと思いますね。
[iTEC] システムアーキテクト「専門知識+午後問題」の重点対策
iTECの「重点対策」シリーズです。
午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの対策本です。
IT系の資格の勉強と言えば、iTECは有名。
参考書に留まらず、通信教育や模擬試験なども手掛けています。
そんなiTECですから、解説がわかりやすくできています。
丁寧な解説を望む、午前Ⅱも心配だから一応勉強しておきたいという人向きです。
[技術評論社] システムアーキテクト合格教本
技術評論社の「合格教本」シリーズです。
午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの対策本です。
合格教本といえば、ディスクがついているのが特長です。
最近は、ディスクの中身が問題演習ソフトになっているみたいですね。
こういうのが好きという人は、勉強が捗って良いかもしれません。
あくまで私見ですが、合格教本シリーズは内容は良いのですが、レイアウトとか色使いが苦手だったりします。
何故か読みにくく感じるんですよね。
単に好みの問題かもしれませんが、自分に合うか、買う前に一度目を通してみることをおすすめします。
[TAC] ALL IN ONE パーフェクトマスター システムアーキテクト
資格の学校TACの「ALL IN ONE パーフェクトマスター」シリーズです。
午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの対策本です。
ひと昔前は見たことがなかった気がします。
結構新しいシリーズなんですかね。
中身を見てみると、懇切丁寧な解説がされていてTACらしさが出ています。
午後Ⅱの論文の書き方についても、細かい解説が入っていて対策講座のような雰囲気。
応用情報技術者試験を飛ばして受ける人、実務未経験者や学生に向いていると思います。
どれを選んでも合格できますが、大切なのは『最後まで信じること』です。
一度決めた参考書から浮気せず、最後まで全部やり切りましょう。
午前Ⅰの対策
午前Ⅰは、応用情報技術者試験の午前問題、他の高度区分の午前Ⅰと同様の出題範囲です。
過去、他の区分の試験に合格していれば決して難しい問題ではありませんし、条件を満たせば免除にできます。
要は、足切りのための試験ですね。
合否を分ける午後Ⅰ、午後Ⅱの問題に集中力を残しておくためにも、できる限り免除にして臨みたいところです。
免除にできないし、問題が全然解けないという人は、午前用の参考書で勉強しましょう。
これはもう、出題範囲の内容を覚えて過去問を解き続けるしかありません。
午前Ⅱの対策
午前Ⅰ試験を突破できる実力があれば、追加で覚えることはほとんどありません。
公開されている過去問題を直近4回分くらいを解く。
わからなかった問題や用語は、インターネットで詳細を調べて覚える。
これで過去問の直近4回分を正解できるようにしておけば、まず落ちることはないと思います。
過去問題からの再出題もそこそこありますし、所詮4択問題です。
60%正解すれば合格点ですから、気楽にいきましょう。
午後Ⅰの対策
午後Ⅰは、大設問4つの内2つを選択して回答することになります。
どの設問も考えて解く類のものなので、新たに覚えることはほとんどありません。
そういう意味では少し楽かもしれませんね。
午後Ⅰでの重要ポイントは次の2つです。
- 時間的に素早く解く
- 自分が解きやすい出題テーマの問題を選択する
この2つをクリアするだけで合格がぐっと近づきます。
まず、参考書に掲載されている問題は一通り解きましょう。
この時、試験時間と同じ時間(大設問1つで40分くらいを目安)を設定して解くことが大切です。
これで全部の問題を解き終わる頃には、コツを掴んで素早く解けるようになっているはずです。
また、参考書の問題を全部解くことで、自分にはどの出題テーマの問題が解きやすいかも把握できたはずです。
ここまでくれば、さらっと問題文を見るだけで、直観で自分が得意な問題を選べるようになっていると思いますよ。
午後Ⅱの対策
論文を書くという試験です。
一見敷居が高そうに思えますが、そんなに難しいものでもありません。
そもそも文章を書くのが苦手という人は、苦労するかもしれません。
でも、日頃から報告書なり仕様書なりを書いている人ならば、しっかり準備しておけば大丈夫です。
言っても時間制限がある試験です。
高度な内容でなくても、システムアーキテクト視点で問題文に沿った論文になっていれば十分合格圏内でしょう。
論文の書き方は、参考書にそのまま従えばOKです。
郷に入っては郷に従えです。
参考書を信じて書いてある通りに学習するのが、合格への近道です。
経験上、一番の問題は『要求される執筆量に対して試験時間が短すぎる』ことだと思います。
どのくらい短いかというと、私の場合、試験時間中ずっと止まらずに書き続けて、やっと指定文字数に達するくらいです。
文字を書くスピードには個人差がありますから、あくまで参考ですが。
こんな感じなので、時間内に論文を完成させる準備をしておくことが重要になります。
具体的には、次の2つをやっておくべきです。
- 論述対象の概要を用意しておく
- 手を鍛える
論述対象の概要を用意しておく
論述対象の業務とシステム/製品の概要を2パターンくらい用意しておきましょう。
考えずにスラスラと書けるくらいでないとダメです。
これを基本形として覚えてさえおけば、実際の試験で問題に合わせてアレンジすることもできます。
手を鍛える
2時間文字を書き続けるのは、かなり大変です。
学生の頃ならいざしらず、キーボード入力に慣れた我々には耐えられない苦しみです。
事前に参考書の論文執筆例を、そのまま丸写ししてみてください。
もし余裕で制限時間に写し終わるなら準備は何もいりません。
時間内に終わらない、ペンを持てなくなる程にキツイと感じた人は、試験本番までに何度か繰り返して手を鍛えておきましょう。
疲れにくいシャープペンを使うというのも良い方法だと思います。
最後に
経験者の立場から、最短合格するための対策方法とポイント、参考書の選び方を説明してきました。
あとは、参考書を信じて書いてある通りに全部やれば、自ずと結果は付いてきます。
体調も万全に試験に臨んでください。